『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大戦争』
絵コンテ・原画 稲野義信
スペシャルな仕上がりだったのが、中盤で鬼太郎とアキオが、バックベアードの砦に忍び込む場面だ。2人をドラキュラと狼男が迎え撃つのだが、奇抜な映像 表現が続出し、その仕上がりはシュールですらあった。正直言うと、初見時には何が起きているのかは分からなかった。何が起きているのはか分からなかった が、怪奇物らしいムードと、ドラキュラと狼男を目の前にして、アキオがパニックに陥っている事は充分に表現されていた。この場面はスタジオバードの稲野義 信が原画を担当しており、この場面のみ、絵コンテも彼が描いている。稲野義信は業界内にもファンの多い、スーパーアニメーターだ。彼のセンスとアイデアに よって生まれたシーンだった。
本編中、暗がりの中で鬼太郎とアキオがドラキュラと狼男と立ち回りするシーンというのがあって、どなたの作画(原画)のシーンだったかは知らないんですが、ノーマル+影にBL(黒)影がガッシリと入り、加えて照り返しがたくさん入ってる、という作画が上がってきました。当時の僕はまだ作画とかがよく分かっていなくて、いくら悩んでもどんな画面になるのか、どんな色にすればいいのか分からなくて、一連のカットをごっそり抱えて土田さんのところに相談に行ったのです。
見せられた土田さんも、ちょっと分かりにくかったみたいで、担当の原画さんを直接呼んで打ち合わせされていたのが強く印象に残ってます。いま思えば、動画より、むしろ原画を見て考えた方が分かりやすかったのです。でも、その頃は、仕上げに回ってくるのは、タイムシートと動画だけが入ったカット袋だったのですね。
かくして、僕の初の劇場用作品『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大戦争』は完成しました。
(出典: youtube.com)
沖浦 ああ……(考えて)……わりと影響を受けやすいところがあるんで、それが作品に反映しているかどうかは別として、初めて出会う新しいものには絶えず影響は受けてる。例えばさっき言った結城さんとか、やっぱり世代的には金田(伊功)さんとか。
小黒 でも、金田さんは直接の影響は、あまりないのでは?
沖浦 金田さん自身の絵だけでなく、金田さんの影響を受けた人達の仕事を見ていたりするので、間接的かもしれないけれど影響は受けています。あまり意識しないで画を描こうとすると、どうしても80年代に流行ったタッチになってしまったりするんです。それが巧けりゃいいんですけど、なかなかそうはいかない。自分の根っこが培われた視点だの、年代というのは抜けきらんもんだなあと思いますね。
小黒 沖浦さんは、稲野(義信)さんの影響を受けてるんじゃないか、という話を聞いたことがあるんですが。
沖浦 ああー! あ、それはありますね。兼森(義則)さんもそうなんですけど昔から好きで、『(新竹取物語)1000年女王』で凄く影響されました。あの時に受けたインパクトが大きくて、アニメーターになってからも古本屋で、一所懸命『1000年女王』のフィルムコミックスを探して買って揃えて、仕事をする時に机の横に置いて──それを見ながら描くわけじゃないけど、その画を見て自分を高めながら描いてましたね。
小黒 それは絵柄を見るんですか。
沖浦 絵柄というか、ポーズとか。稲野さんの作画は『(夢戦士)ウイングマン』などもそうでしたけど、全然枚数を使ってない作品でも、原画の画が凄く決まってるのがかっこいいなって。逆に枚数使っていい時にあんまり(原画の画が)目に残り過ぎると、まずいのかもしれませんが。当時は凄くしびれてましたよ。他には『アリオン』を観たら、やっぱり稲野さんのパートが突出していて。「なんじゃこりゃー!?」と思ったり。ただ、実際にどういう考えで描かれていたのかは、ちょっと分からないですけど。
小黒 そうですよね。
沖浦 どうやって、あそこに辿り着いたのか、なぜあんなに一人だけ異質なんだろうと思うんですが。
小黒 稲野さんは、湖川(友謙)さんのお弟子筋らしいですよ。
沖浦 そうなんですか。言われてみれば『(聖戦士)ダンバイン』とかでも原画を描かれていましたよね。"
■animator interview 沖浦啓之(6)
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